理由
太鼓の音が響く。 
周りには人が沢山いて。
それも当たり前。
今日は一年に一度の夏祭りですから。





理由





「サスケっ、早く早く!」
「夜店は逃げねえっつの。つか着崩れするから走んな」

ぱたぱたと道を走るナルトの後を追うサスケ。
嬉しそうな顔を見て、良かったと頬が緩む。
木の葉隠れの里の祭りは神輿や夜店がでて皆で騒ぎ、そして最後に花火と言う豪華且つ有名な行事の一つだった。
ナルトはサクラに着せてもらったオレンジ色の浴衣を着ている。
それはサスケがナルトに似合うと思い買ったものだった。

『嫌だ・・・行かないってば!』

そう言ったときの顔とは全然違うな、とサスケは苦笑を漏らした。










それは、二日前の話―――

「明後日夏祭りがあるのよ。ナルト知ってる?」
「ううん。知らなかったってば。でも、そういえばそんな時期だってばね」
「先生、イルカ先生と行く約束取り付けちゃったv」
「どうせ無理やり誘ったんでしょう」

サクラの言葉に鋭いなー、と返すカカシを見てナルトは顔を伏せた。

楽しげな音楽。
わいわいと騒ぐ子供の声。
そして、花火の音。

「ナルト、あんたも行くでしょ?」
「え?」
「お祭り。私イノとヒナタと行くの。あんたはサスケ君と行くんでしょ?」

浴衣着せてあげようか?と笑顔で問うサクラに、ナルトは困った顔を向けた。

言わなくては。
行かないつもりだ、と。

「着せてもらえよ。どうせ行くんだし」
「え・・・?」
「行くだろ、俺と」

当たり前のような顔をするサスケを見る。

違う、行かない。
行けない。

「い、かないってば、俺」
「何でだよ?」
「俺、行ったことねーもん。行く気もねーし」

キッパリと言い放つナルトに、サスケもサクラも間の抜けた顔をした。
いつも騒いでいるナルトが祭りに行かないだなんて、ありえない。
カカシは何かを悟ったようにあー、と声を上げた。
振り向くサスケにへらっとした笑みを返す。

「サスケと行くのがやなら先生達と行こうかー?」
「私達とでもいいわよ?ほら、ヒナタ喜ぶし!」

サスケを無視し言う二人にサスケは舌を打った。

「俺はお前と行きたい。なんでもいいから絶対に行くぞ」
「無理だってばよ」
「なんでだよ?・・・迎えに行くからな」
「嫌だ・・・行かないってば!」

そのまま駆け出すナルトを見て。
ちらりと見えた潤んだ目を見て。

あぁ、なんて可愛い顔で泣くのだろう。

思いつくのは頭が沸いたような言葉だけ。










「なぁなぁっ、あんず飴食べたいってば!」
「浴衣に零すなよ」
「零さねーってばよ!」

べぇっと舌を出し、あんず飴を買う。
お嬢ちゃん可愛いから一個おまけ、と言われて。
女の子じゃないってば、と思いながらおまけしてもらえたのが嬉しいらしくナルトはへらっと笑った。
きっとこの里の者ではないのだろう。
的屋の者のほとんどは別の里や国から来ているのだ。

「サスケ、一個やるってばよ」
「甘いもんは苦手だ。お前が食えよ」
「二個も食えねってば」
「・・・仕方ねえな」

ナルトからあんず飴を受け取る。
ナルトは嬉しそうに笑った。

その様子を、じと〜っと見ている一つの影と、後ろに佇んでいる影。
怨めしそうに二人を見守って―――むしろ睨んで―――いるのは、何を隠そう元担任である海野イルカだ。

「ですから、どうしてナルトは祭りにサスケと来ているんですか?カカシ先生」
「さぁ?なんででしょ。イルカ先生イカ焼き食べます?」
「俺はですねぇ、ナルトが今年も祭りに来ないと思ったから渋々貴方と来たんですよ!?」
「イルカ先生ひどっ、ひどい!俺のことは遊びだったんですね!?」
「今まで俺がどんなに誘っても来なかったのに・・・!一体どんな手を使ったんだ・・・!?」
「・・・丸ごと無視ですか?」

カカシの言葉を全く聞かない自他共に認める親馬鹿イルカは、カカシのイカ焼きを奪い取りソレを食べながら二人をみている。
楽しそうに笑うナルトを、涙を流しながら見ていた。






「サスケ、次はアレが食べたいってば!」
「お前食い物ばっか食ってんじゃねえよ。もうすぐ花火始まるし、そろそろ行こうぜ」
「あそこの神社から見るのが一番綺麗ってサクラちゃん言ってたってばよ?」
「あぁ。でもあそこは込み合うからな。もっと空いてる所に行くぜ。お前もその方がいいだろ?」

サスケの言葉に、ナルトは嬉しくなった。
サスケが言ってくれた言葉に嘘はないのだと。










時を遡る事一日前。
昨日全く話を聞かなかったナルトの元へサスケは来ていた。
ナルトが寝ている早朝から。
昨日は部屋に入れてもらう事も出来ず、ナルトが気を張り侵入することも出来ず。
サスケは扉の前で暫らく待っていたのだが、結局扉も開かず。
ナルトが眠り、熟睡している時間帯に忍び込んだのだった。

そろそろ目覚まし時計が鳴る。
サスケと違い、ナルトの寝起きはとてもいい。
目覚ましが鳴ったと同時に起き上がり、活動をし始める。
集合時間ぎりぎりまで寝ているサスケとは大違いだ。
だがそれも、サスケの家に泊まらない時に限る。
サスケの家に泊まった翌日は、ナルトはぐっすりとまるで死んだように眠り、サスケが起こすまで目を覚まさない。
全ては寝る前にする行為のせいなのだが。

―じりりりりりり・・・

もぞもぞとナルトの腕が動く。
目覚まし時計を止めようと伸ばした腕が思うように動かず、ナルトは目を開けた。
目の前に写る漆黒の目に、眠気も吹っ飛び目を見開いた。

「おはよう」

サスケは、目を細めながら握っていたナルトの手に口付ける。
ナルトは暫し硬直し、その後に瞬きを二回ほどすると真っ赤になってサスケの手を振り解いた。

「な、なっ・・・な?」
「な?」
「なんでいるんだってばよ―――!!!」

ナルトの叫び声にサスケは指で片耳を塞いだ。
「テメエが俺の話聞かねえからだろ」
「聞いたってばよ!」
「聞いてねえ」
「聞いたっ」
「聞いてない。お前がなんで祭りに行きたくないかも」
「っ・・・」

一瞬動きの止まったナルトの手を再び握り、ベットの上に乗り込む。

「何もしない。話だけ聞け」

暴れようとするナルトに、サスケが言う。
渋々と動きを止めたナルトが、分かったから手、離してと告げる。

「逃げるから嫌だ」
「逃げないから・・・着替えるだけ」

ナルトの言葉に、サスケは手を離す。
ベットから降り、いつもの服に着替える。
黒のTシャツに、オレンジ色の上着とズボンだ。

「なんでお前は祭りに行きたくないんだ?」
「・・・人ごみ苦手なんだってばよ」
「どうしてだ?」
「色んなヒトがいるし・・・」
「当たり前だろ」

そうなんだけどさ。
困ったように笑うナルトが痛々しくて。
一瞬目を離してしまったのが悪かった。
その一瞬の隙に。
ナルトは。
姿を消した。






「あんの、ウスラトンカチが・・・っ」
「で、ここにも来てないと。」
「・・・そういうことだ」

サスケが苦々しく言うと、サクラはニッコリと笑った後に吐き捨てる。

ばっかじゃないの?サスケ君」
「うるせえよ」
「あら、ごめんなさい。それで?ナルトのこと追いかけたの?」
「捜してはみたんだが・・・見つからなかった」
「気配もしないしねぇ」

全くとため息を吐くサクラに、サスケは舌を打った。
確かに悪いのはサスケ自身であるけれど。
油断というか・・・そういうものをしたという自覚もあるけれど。
「見つからないのは俺のせいじゃねえだろ?」
「愛が足りないんじゃない?あぁ、そんなにナルトのこと好きじゃなかったの?あらまぁ」
「ふざけんなっ、んなわけねえだろ!」

あらまぁじゃねえ、とぶつくさと漏らしながらもサスケは別の方向を見た。
再びため息を吐いたサクラはあのねぇと続ける。

「じゃあ捜しなさいよ。根性で。第一、ナルトが避けてる話題をいきなり振るのもどうかと思うわ」
「・・・・・・・・・」
「成績も運動能力も顔もいいサスケ君も不器用だった、ってことね」

恋愛に対したら。
可笑しそうに笑いを堪えるサクラを一瞥し、すぐに視線を逸らした。
サクラはあら、と些か驚いたように声を漏らした。
言い返さなかったのが予想外のようだった。
実際、不器用でなければナルトに告白するまでにあんなに時間や体力や神経を使う必要もないのだ。

「とりあえず捜してみたら?カカシ先生には言っとくから」
「あぁ。まあそのために来たからな。頼んだ」
「その必要はないよー」

後ろからの声に振り向くと、いつもより眠たそうな顔をしているカカシの姿。
手を振りながら、おはよー諸君と笑った。

「実は今日任務ないんだなーこれが」
「これがじゃないわよ。昨日伝えてよ」
「待つのも修行vってことでかいさーん☆サスケはさっさとナルトを捜しなさい」

言われなくてもそうするつもりだ、と心の中で返し、サスケはナルトが行きそうな場所へと足を向けた。






一楽、映画館、アカデミーの屋上。
何処にも捜し求める人物はいなくて。
最後の最後に。
あの場所に。




「・・・見つけた」
「見つかっちゃった」

火影岩の見える高台のベンチ。
そこにナルトは座っていた。
サスケが呟くと、ナルトはサスケの方を向き、へにゃっと笑った。
近づき、後ろから抱きしめる。

「・・・冷えてる」
「うん」
「ずっといたのか?」
「うん」
「・・・何、してたんだ?」
「考え事、だってば」
「何、考えてた?」
「サスケになんて言おうかな、って」
「・・・言えるのか?」

サスケが聞くと、ナルトはうんと軽く頷いた。
そして、全部じゃないけど。と続ける。

「それでもいい」
「うん」

そういうと思ったってば。
ナルトは自分の体に回されたサスケの腕をきゅっと掴んだ。

「俺ってば、キラワレモノなの」
「・・・・・・あぁ」

いきなり出てきた言葉にサスケは詰まった。
知っている、とも知らなかった、とも言えない。
聞きたいけれど、なんと言えばいいのだろう。

「だから、お祭りとか・・・ヒトが多いと困るんだってば」
「・・・あぁ」
「ただ、それだけなんだってばよ。サスケとは、お祭りとか、その・・・行ってみたいけど・・・」
「だから、行こうぜ」

自分は無体なことを言っているだろうか?

「無理だってば・・・」
「大丈夫だ」
「・・・何が・・・・・・?」
「俺が守ってやるから。お前を傷つけさせたりしないから」

絶対に。
サスケが言うと、ナルトの本当?という声が聞こえて来て。
サスケはあぁと頷いた。
行きたいんだろ、と聞くと。
うん、と頷く。

「行ったことないだってば。イルカ先生に誘われて行きたかったけど・・・怖くて」

何が?
と。そう聞けば。

「傷つくのが」
「そうか・・・大丈夫だ」
「違うってばよ?俺が傷つくのが怖いんじゃなくて・・・」
「?」
「一緒に行ったら、イルカ先生とか・・・サスケが傷つくと思うから」

他人のことなんて放って措けばいいのに。
何処までもお人よしなナルトにサスケは思う。
ナルトがもっと無神経な性格で、もっと大雑把な性格だったら。
こんなに傷つくこともなかったのにな。

「俺は平気だ。だから行こう」
「・・・うん」
「一緒に行きたかったんだ」
「うん」
「浴衣着ろよ」
「持ってないってばよ」
「買ったから。オレンジ色のやつ」
「はァ!?」

浴衣を!?
ナルトが問うと、サスケは頷いた。
似合うと思ったから、と。



行くかなんて、分からなかったのにね。










―どん・・・パラパラパラ・・・

咲いては散る大きな花を二人で見る。
ナルトは顔を輝かし、サスケはその横顔を見ていた。
ナルトの顔も色々な色に染まる。
いつも綺麗な蒼色の瞳も、赤く、黄色く、染まった。

「ナルト」
「ん?な・・・」

ちゅぅと。
唇に口付けを落とせば、顔が花火のせいでなく真っ赤に染まる。
木の葉の里全体が見渡せる木の太い枝の上。
そっと体に手を伸ばせば少し離れる。

「な、なに!?」
「いや・・・少し走ったから崩れたな」
「あ、うん」

そんなことかと安心したナルトを他所にサスケは鎖骨が丸見えになった襟にに手を掛けた。

「な、」
「・・・浴衣ってさ」
「う、うん?」
「脱がせるのエロくねえ?」
「・・・・・・・・・はい?」

ワンモアプリーズ。

いや、エロいってエロいって・・・えろ?

「すっげえ興奮するな・・・」
「ちょ、ココ何処だと・・・」
「木の上」
「じゃなくって、いやまあそうだけど!ソト!ココ外だってば!」
「そうだな」

何、脱がし始めちゃってるんですってば?

「まあいいじゃねえか。たまには違うシチュエーションも。な?」
「な、じゃなくって・・・さぁ・・・」

せめて帰ってから、とか?
ナルトの提案に、サスケは少し考える。
計算にも近いが。

ココで何回もヤるのはキツイしな・・・
まあ俺は余裕だがナルトが辛いか。

その時間、約数秒。

「よし、帰ろうぜ」
「うん。ってか歩けるから。自分で」
「ダメ。着崩れしてるから」

更に着崩れさせたのは誰だよ。
ナルトの悪態を聞かないことにして、お姫様抱っこ。
ナルトは嫌がるけれど、まあ気にせずに。

脱がしやすくとてもエロい浴衣を脱がし。
今日はナニをしようかな。

サスケの考えは、サスケにしか分からないことだったけれど。
次の日、任務があるかも分からない。
そこはカカシの気遣いに任せるしかなかったのだけれど、ね。









end














言い訳

と、いうわ け で ☆
うたげ様に送る相互リクでございまっす。
初めに提案したのはワタクシ。
遅くなったのもワタクシ。
・・・・・・本っ当に申し訳ありませんでした・・・!
リクは「お祭り」でしたのに・・・祭りの時期でもないし祭りに行くまでが中心だし。
さ、最後のあほなサスケでお許しを・・・
うたげ様の素敵な小説とでは月とスッポンですがどうぞお受け取りください・・・






蒼月様、ありがとうございますー!
着物萌えがっ、橙色の浴衣なんてまさにナルトの為にあるもので、鎖骨がチラリでもう!
泣き顔も笑顔も可愛い、いじらしくて愛おしくなるナルトを私が即お持ち帰りしたいですっ!脱・が・し・た・い・!ハァハァ(←殺)
浴衣リクなんて我が儘に素晴らしい小説をありがとうございましたー!

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