里を出て伝説の三忍と修行に出たのはいいけど、やっぱりサスケと会えないのは辛い。

音には任務で潜入してるんだってわかってても、そばにいないと不安になってくる。

 

 

乗月舟

 

 

天上の二人を覆い隠すような空を見上げて、思わず盛大なため息をついてしまった。
単なるおとぎ話にまで嫉妬するなんて、随分自分はサスケに依存していたんだなと改めて思う。

それもサスケが身寄りがいないナルトが欲していた父や兄という役割をしてくれていたのだから、ある意味当然と言えば当然だ。その上近年ではその中に『恋人』なんてカテゴリーも増えていて、サスケと言う存在は日に日に大きくなっていたのに。

大蛇丸がサスケを狙っていると聞いて、ではそれを逆手に取ってやろうと三代目はサスケに極秘任務を与えた。全てを騙し、密かに音を壊滅に導けという任務。騙すのは敵はもちろん味方も全て。

それを受けたサスケはこっそりと俺にだけ任務内容を教えて、必ず帰ってくると約束した。だからそれまで騙されたふりをして、待っていて欲しいと言って。

「…サスケ」

愛しい人の名を紡いでも、それに答えてくれるものはない。

窓を開け放したままごろりと寝そべったナルトは、腕で目を覆ってまたため息をついた。

風が吹いたのだろうか。月明かりで明るくなった部屋に、不意に影がかかった。

腕で目を覆っているからといって、それぐらいは感知できる。

腕をずらすと、月を背に人が立っているのがわかった。

その見覚えのある影にまさかと思って起き上がると、そこには以前見せてもらった暗部服に似た黒衣に身を包んだサスケが立っていた。

「サ…!」

名前を呼ぼうとしたナルトに、サスケは口元に人差し指を当ててナルトの好きな笑みを浮かべた。

名前を呼ぶなということだろうか。呼ぶ呼ばないよりも、その笑みに見とれて声が出なくなってしまったのでナルトはうつむいた。

多分今顔は真っ赤に熟れ上がっているだろうから恥ずかしくてサスケに顔を向けられない。

そんなナルトの胸中を察したのか、サスケは膝をついて顎をつかむと無理やり自分に向かせる。

「何照れてるんだよ。ナルト」

「…だ、だって」

久しぶりに見たからいつもよりドキドキしたなんてとナルトは思ったが、さすがに口には出せなかった。

会いたいとは思っていたけど、いざ会うと何だか妙に気恥ずかしい。

「な、何でこんな所にいるんだってばよ…」

「あいつに任務を頼まれたから来たんだが…ナルトは?」

「俺はサスケを取り戻すって宣言してエロ仙人に修行をつけてもらうために同行してる」

「…変なことさせられてねぇだろうな」

どうも自来也にあんまりいいイメージがないようだ。眉をしかめて、真剣に尋ねられてしまった。

「されてないってばよ。エロ仙人は女の子しか相手にしないから、そんな心配しなくていいって」

「お前のあのお色気とかで落ちてなかったら心配しないんだがな…」

それを言われてはフォローの仕様がない。

「もし何かあったら、すぐに逃げて来いよ」

「音なんてどこにあるか知らないってば」

「ウスラトンカチ。俺達の隠れ家に、だよ」

サスケは里からちょっと離れたところに結界を張り巡らせた家を持っている。以前はそこでよく二人で過ごしていたが、下忍になってからはあまり使ってなかったところだ。

「あそこに? いいの?」

「いいも何も、あそこは二人で会うために買ったんだからな」

里にナルトが安心していられる場所がなかったからそれまでの稼ぎを使って買った家。疲れたらいつでも休めるようにしてある。

「それより…ナルト」

「何?」

「今日は七夕で外がにぎわってるから、ちょっと変化すれば気付かれないと思うんだが」

そう言ってサスケはナルトの腕を取って自分の方に引き寄せた。

「外に行こうぜ」

「…サスケは平気ってば?」

「影分身置いてきた」

その言葉にナルトは眩しいほどの笑顔を見せると組みなれた印を組んだ。

一体だけの影分身を作って、自分は髪の色を変える。

「これでいい?」

「ああ。俺も変えねぇとな」

サスケも印を組むと髪と服だけを変えた。

ナルトは黒髪に。サスケは金髪に。

「いつもと逆だってばよ」

「たまにはいいだろ? こういうのも」

年相応に笑ってくれるサスケがものすごく久しぶりで、ナルトは思わず抱きついた。

そんな唐突な行動にサスケはわずかに頬を染めたが優しく頭を撫でる。

「またこんな時があればいいな」

「うん。こんな偶然があればいいってばね」

二人はそう言って笑った。

 

 

月の舟の櫂など壊してしまいたい。

でもそれは出来ないから。

離れている時は永遠のように感じるのに、会える時間はほんの一瞬。

少しでも長く、一緒にいたい。

 

人ごみの中二人はずっと手を握っていた。

次に会える時まで互いの体温を覚えていられるように。

 

街の笹につけた短冊に願いをこめて、その手を離す。

 

『また、今度』

 

 

 

 

題名適当ですみません…!(ジャンピング土下座)
でも去年から考えてた月の舟の記述が出せて満足なり…。レポートの狭間で細々とやってたから、ちょっとおかしい気もするけどまあいいか。
というか、サスケが出てこなかったらよかったのに…な感じの会えない期間の捏造です。スレサスです。一応。

そして補足。
月の舟というのは会う手段。前回のはカササギの橋だったので、今回は舟に。でも本当は渡るのは両方とも織姫…。でも、日本では話が入ってきた時は妻問い婚が普通だったので舟をこいでわたったのは牽牛だったんだよ!と言い訳。もともと中国では嫁入りが普通だったから織姫が行くのだそうです。今回は妻問い風に。 

こんなのでよろしかったら、ご自由にお持ち帰り下さい。
今月一杯フリーです。



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