それは、どんよりと雲が垂れ込めている日のこと。
「クリスマス?」
「…予定、あるか?」
そっぽ向きながら「予定があるなら別に…」とボソボソ言っていたサスケの頬はほんのりと赤く染まっていて。
寒くて赤くなってた頬を更に赤くさせて、ナルトは不器用な恋人に抱きついた。
君と僕の色
イブにサスケの家に泊まると言うことになって、ナルトは買い物に来ていた。
サスケに了承した後、当日来る前にケーキを買って来いと言われたのだ。
サスケ曰く、「プレゼントとかで悩んでる内に知恵熱でも出されちゃたまらない」とのこと。
反論しようにも、試しに考えてみたら頭がショートしそうになってしまったので大人しくナルトはケーキを買いにやってきたのである。
「ケーキは、小さめでいいか。サスケ嫌いだしなぁ」
他の物はサスケが自分で作っておくといっていたので、このままサスケの家に行けばいいのだが。
「…何か、さみしい」
やっぱりプレゼントあげたいなぁとウインドウをのぞいていると、マネキンのマフラーに目が留まった。
「これなら、サイズとか関係ないし…」
何より、サスケに使ってもらえそうである。
ナルトはそう考えて店に入って行った。
「サースケ! 来たってばよ」
「おせえよ、ウスラトンカチ」
「こんな日にウスラトンカチって言わなくてもいいだろ! バカサスケ!」
「早くあがれよ、寒いだろ」
促されて、ナルトは中に入った。
「ナルト、ケーキ」
「へ?」
「冷蔵庫に入れておくから、貸せ」
「あ、うん」
持っていたケーキの箱を渡すと、サスケはそのまま歩いていく。
「あ、待ってってば」
始めてきた客をおいて行くなとナルトは慌ててついて行った。
居間には二人分の食事が並んでいて、サスケと向かい合うように座った。
二人で乾杯して、料理を食べている時にふと、サスケがナルトの上着から見えるリボンに気がついた。
「何だ? それ」
「ん? ああ、これ」
ナルトはそれを出して、サスケに渡した。
「はい」
「…クリスマスプレゼントか?」
「うん」
何にもあげないって言うのも寂しいからとナルトが笑顔で突き出すので、サスケは受け取った。
「開けてもいいか?」
「いいってば」
リボンを取って開けてみると、出て来たのは黄色いマフラー。
「…俺にはちょっと派手なんじゃないか?」
「あ〜、やっぱそう思う?」
ジュースを飲みながら、ナルトは言った。
「他に色がなかったのか?」
「んーん」
「じゃあ、何で――」
そう言い掛けて、サスケは手にしている黄色のマフラーをまじまじと見て。
歪む口元を隠すように手で覆った。
「――ああ、そういうことか」
「へ?」
突然立ち上がったサスケにナルトは目を丸くしていたが、すぐ戻ってきたサスケの手の中の物に目を輝かせた。
「サスケ、それ何の花だってば?」
「クリスマス・ローズだ」
「へー」
「やる」
「え? いいの?」
「俺からのクリスマスプレゼントだからな」
「うわー、ありがとうサスケ! これどんな色の花が咲くんだってば?」
「黒」
ラッピングされたそれを嬉しそうに様々な方向から見ていたナルトは、あまりにも華やかとは言いがたい色に首を傾げた。
「黒? 他に色はなかったの?」
「いや? 赤や黄色もあった」
「じゃあ、何で黒にしたんだってば?」
ナルトの言葉に、サスケはマフラーを指して口角をわずかに上げた。
「同じ理由だと思うぜ? お前のこれと」
ナルトは自分の贈ったマフラーと、膝においてあるクリスマス・ローズとを交互に見ているうちにサスケの言わんとするところを察したのか段々顔を赤く染めていく。
「あの、そ、それって…」
「持ってて欲しいと思ったんだろ?」
サスケの笑いを含んだ声にナルトは耳まで赤くした。
「少なくとも、俺はそう思ってそれにしたんだが?」
サスケがいつの間にか腰に手を回して、耳に直接声を送り込むように口を近づけている。
「お、俺も…」
「俺も?」
耳を甘噛みされ、ナルトは身体を強張らせた。
「や…サスケ、まだ、ケーキ」
腰に回されたサスケの手に身の危険を感じて、ナルトは必死に言って身体を遠ざけようとしたがサスケの方が力が強く、逆に引き寄せられてしまった。
「ケーキは、明日にしろよ」
クリスマス・ローズの鉢を遠ざけられ、ナルトは膝に手を差し入れたサスケに抱き上げられてしまった。
お姫様抱っこという格好よりも、これからのことにナルトはもういっぱいいっぱいで。
次の日は任務が休みということもあってナルトは一日中布団の中の住民となったのだとか。
夜の内に降った雪で遊べず、ナルトは恨めしそうにサスケをねめつけたのだった。
終
メリークリスマス?
クリスマス・ローズは前から(実は去年から)ナルトにプレゼントしたいと思ってたのでようやく出来てよかったよかった。一応ホワイトクリスマスだけど、ナルトは外に出れませんね。ケーキも布団で食べたのかな?(聞くな)
これ裏で続きが書けそうですね…。(九割方やらないと思うけど)
今月いっぱいフリーです。
お気に召したら、どうぞ。
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