7 しんらいかんをもってもらうのがたいせつです
つのとしっぽ
「サースケー」
ほたほたと足音を立てて金色の子狐の声が林から聞こえてきた。
自分の胴を枕にしていた黒龍を見つけると、ぽんと軽い音をたてて人の姿になって飛びついた。
「見ーっけ!」
「…ナルトか」
眼を薄く開いて、赤い瞳を自分の鬣にしがみついている金髪の子供に向けた。
「ナルト、退けよ」
頭を持ち上げ、龍も音をたてて人の姿をとる。
「サスケ、また髪伸びたってばよ」
背中に垂れる黒髪をくいくいと引っ張るナルトをやめさせると、サスケと呼ばれた龍もナルトの髪を見る。
「お前も伸びたな」
「へっへー。がんばってるもん」
得意気に胸をそらしたナルトは九尾を揺らめかせる。
「でも、半化けなのな」
ぴんと立った耳に九本の尾は人にはないものだ。
「むぅ、サスケだって角でてるし耳もとがってるってば!」
ナルトに指摘されたサスケは両脇から出ている角を触る。
「そろそろ取れそうで、かゆいんだよ」
龍の角は何度か生えかわる物で特に子供の時分に頻繁に生えかわる。
「また取れるってば?」
「また欲しいか?」
「くれるの?」
「別にいいぞ」
「ほんと?」
ナルトは目を輝かせ、がばっとサスケの首に飛びついた。
「サスケ大好きーv」
「ぐ…っ!」
サスケは首に回された腕を急いで引き剥がす。引き剥がされたナルトは目を丸くする。
「サスケ?」
「お前…逆鱗っての知らねーのか」
「げきりん?」
首を傾げるナルトに、サスケはため息をつきながら説明する。
「逆鱗ってのはな、そこを触られるとつい怒りたくなる場所とかの例えでよく使われるだろ?」
「そーなの?」
「…まあ、とにかくその逆鱗が首にあるんだよ」
「ふーん」
「だから、触んなよ」
「触ったら、サスケ怒んの?」
「そうだ。怒られたいのか?」
ふるふるとナルトは首を振ると、つまらなそうに身体を離す。
「じゃあ、これからサスケに抱きつかないようにする…」
「…いや、首にさえ気をつけてくれれば、いい」
サスケはナルトに抱きつかれるのが嫌ではないのだ。
むしろ、抱きつかれたいがために角をあげているようなものだ。
「じゃ、こう?」
ナルトはサスケの背に手を回して抱きついた。
肯定の意味をこめてサスケもナルトを抱きしめた。
目の前で揺れる触り心地のよさそうな尾を誘われるように、毛並みにそってなでる。
腕の中のナルトは、始めは体を固くさせたがすぐにサスケに身をゆだねた。
最初は乱暴な手つきでなでられて、苦労して整えた毛並みをぐしゃぐしゃにされてしまったが、今ではとても優しくなでてくれるのでナルトはこの時間が好きだった。
日当たりもよく、サスケの腕の中はひどく心地いい。穏やかな心音に耳を傾けていると、サスケより幼いナルトの瞼は徐々に落ちてくる。
「…ナルト?」
尾の動きが鈍り、不思議に思ったサスケの声に返ってきたのは、健やかな寝息だけ。
「…寝ちまったのか」
なでる手を止めて、そっと血色のいい頬をなでる。
このまま時間が止まってしまえばいいのにと何度考えただろう。
「――離れたくないな」
一ヶ月という長いようで短い期間にしか会えないこの仔に恋しているのに気がついたのは、最初の一ヶ月の終わりで。
寂しそうに「またね」と言われてからだ。
それから一ヶ月だけの逢瀬は今までずっと続いている。
「これから一ヶ月。ずっと一緒にいような?」
たった一ヶ月でも、君に触れられるこの時を大事にしたい。
そんな想いをこめて、サスケは膝で眠っている仔狐の頬に口付けた。
黒龍と金狐の一ヶ月はまだ、始まったばかり――。
終
あ、角あげてない!取れかけてただけだから、あげてないよ!
ちなみに、もう一本ぐらいこの設定でお題書きたいと思ってます。あくまで希望。
ちなみに、サスケが年上…って、まず二つの種族の寿命が違うか。
お題消化も兼ねているこの話で5000hitお礼小説といたします。
大体一ヶ月ぐらいフリーです。
もしよかったらお持ち帰り下さい。
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