夜闇の侵入を許す。
かたりと常ならばする僅かな音も無く背後に立つのはまさに夜闇だ。
六代目火影であるうずまきナルトはこの里、否、自らの影ともいうべき存在を向かえた。









侵入領域









最後の報告を受けた六代目火影は口寄せで予定していた次の通達を待機させていた暗部総括である日向ネジと実行部隊である暗部酉班隊長油女シノへと送る。
本来ならば報告を済ませた者への労いと退出を許すのが先だが、少しでも速い情報の伝達が必要とされる故、こちらを優先した。
どんな任務であれ情報の正確さと速度というものは非常に重要だが今回の任務は特に、今後の展開が情報戦となるので得られた結果からの判断と実行の情報を一秒でも速く伝える必要がある。
口寄せ契約した蝦蟇からネジとシノ、双方の了解が意識に伝わった所でナルトはほっと息を吐いた。
これでこの任務の山場を一つ越え、折り返し地点へと漸く辿り着いたという安堵からのもので、その息を吐くほどに緊張していたのは背後に控える暗部隊員が実行した任務の難しさにある。
火の国の海側に隣接する国で反乱軍が半年近く前に生まれた。
商業の中心であった鉱石の減少による国全体の低迷から出来たものと表向きはなっていたが、影では大臣らの下克上が絡んだきな臭いものだ。
小さな小競り合いを繰り返していた中、自体が毛色を少し変えたのは半月の事。
膠着し長引けば不利な反乱軍が今後の活動資金を目当てに波の国の大臣を誘拐した。それは城主の退陣を考えていた大臣らにとっては考えもつかなかった予想外の事である。
彼らはあくまで国の、城主の勢力の削減を狙っていたにすぎず、この反乱を自分達で仕組み、それを和解という民衆を見方に付けた解決で納めたあかつきに自分達が国の中心に成る事が目的で、今後とも大事な貿易の相手である波の国との関係を悪化させる気は毛頭無い。
そこから綻びが生まれ、ついには裏で操っていた面子が城主に晒され始めた頃に木の葉にこの依頼が成された。
『波の国の大臣の救出とその後に反乱軍の頭首のみの暗殺と反乱軍の解体』
依頼主は隣接国の城主と波の国双方から。
そしてこの任務には一つ注釈が付いた。
波の国の大臣の救出、そして頭首の暗殺に際し、頭首以外の反乱軍の殺害は出来うる限り行わない事。
特に隣接国の城主からの強い要望で付けられた注釈には、元は国の衰退と大臣らによって操られる形となった国の民に非は少ないという建前の他に、それこそ温情を見せるやり方で弱まった国へ民衆を味方に付けておきたいという思惑、そして反乱軍も頭首の統率だけで纏まっており、決して一枚岩ではないので寝返らせるのも可能という計算が働いた事にある。
隣接国との外交もさることながら現火影になってからは特に深い親交のある波の国からの依頼という事もあり木の葉の里はこの依頼を引き受けたのだが、ともあれ任務を遂行する忍にはかなりの実力が要求される結果になった。
まず救出だけにしても影で大臣らから援助を受けていた反乱軍には雇われた抜け忍や豊富な武器があり、殺害を極力避けるというという注釈から難易度は容易に高くなる。最も雇われた抜け忍などは殺傷に関して注釈から外されるが。
それでも数がそれなりに多い反乱軍の中では苦しい。
それほどの、Sランク任務の中でも上位に位置するものとなれば矢張り暗部へと回すしかないと判断し、暗部の中でも総括が指揮する一の部隊に最初の救出と暗殺、その後の解体は情報戦に長けた酉班に行うよう命じた。
そして最も困難を極めるのが頭首の暗殺。
力の差を見せ付けるためと人質の安全の為に救出の後の暗殺という手法が選ばれているのだが、だからこそ難しい。
援助されていた大臣らとの不和と先に人質を失った事からより一層強固になっている反乱軍の警戒と護衛を掻い潜り、大勢の反乱軍に見つからずに頭首のみを暗殺するというのは相手が忍でならずとも困難を極める。
実力とそれぞれが持つ能力を考慮した結果うちはサスケへと命じた。
白眼を持つネジには救出を目的とさせたかったというのと、この里最高とされるナルトとほぼ互角と言える実力を持つのは矢張りサスケだろうと補佐官らの意見とも一致した結果、何より遂行出来ると判断して任せたのだが、どんな任務に於いても絶対などというものはない。
「ご苦労だった…サスケ」
名を呼ばれたのが合図だったかのようにナルトの後ろで跪いていた男が狐を模した面を取り、現れた漆黒の双眸が火影であるナルトを見上げる。
六代目火影の副補佐官の一人であり、暗部総括の実働部隊である狐班の一人でもあるうちはサスケがまさに影のように従っていた。
「怪我はねーみてーだな」
くるりと振り返り、笑みを浮かべたナルトは先よりもずっと砕けた口調で言ってはいるが心よりの心配である事が分かる。
それは火影としては勿論あるが、うずまきナルト個人からと言った具合の方が大きかった。
火影直轄とはいえ、部下の前では本来はあってはならない事かもしれないが、部下と上司だけではないものを否定し、捨てる気は無いからこそナルトは時々こうして公務の中でもうずまきナルトとしての顔を見せる。
結界を張った深夜の執務室には他に誰も居らず、火影邸も必要最低限の人間しか待機していない。そして普段火影の護衛を兼ねる暗部ももう引かせているからこそ出来る事だが。
「当たり前だ」
答え、立ち上がったサスケもそれが分かっているからこそふてぶてしくさえある笑みを浮かべた。
半月掛けた任務の前半の最後を飾ったとは思えないほどの余裕ぶりに、感心するよりもらしいとナルトは笑ってしまう。
どんな理由であれ、何をどう取り繕うが暗殺という仕事を負わせてしまった時の、火影としてではなくナルト自身の呵責を宥められるような気がするほどにサスケの浮かべた笑みは平素と変わらぬもので、そんな風に強くあろうとするサスケの精神に感謝する。
だがサスケからすればどれだけ暗い暗部の任務を請け負おうとも、ナルトという光が帰る場所なのだからこそと言いたい。 言った所でサスケの想いの十分の一も伝え切れはしないだろう。
それはサスケだけでなく暗部に属する多くがそうだろうという事実に、誇らしいと想う気持ちと同時に腹立たしさも感じる。
暗部という里の暗い部分を一手に引き受ける影へ、火影であると同じくらいナルト個人が想う所が大きいからこそ余計に。 出来る事なら暗部のこういった任務全てを自分に回して欲しいとさえサスケは思う。
そうすればナルトがその事で感じている呵責を全て独占出来る。どんな種類であれナルトの感情は少しでも奪いたいと、火影という決して本当の意味では独占出来ない立場になってしまった己の心を独占している存在を渇望せずにはいられない。 無論、無理な事が分かっているから口には出さないが。
「怪我がねーならもう帰って休めってばよ。疲れただろ?何とか明日は休暇に出来るからさ、少ねーけど丸一日ゆっくりしてくれ」
報告を終え、任されていた任務が完全に終わりを告げたサスケにナルトが申し分けないと謝りながら、火影として退出の許可を出した。
本来暗部の任務の後は長期休暇が容易されるのが普通だが、副補佐官でもあるサスケはそうも行かない。
暗部者が誰かと表には出すわけには行かないのでサスケは表向きには働きすぎ故に強制的に長期休暇を取らされている事になっている。
実質的に火影邸の業務にも支障が出始めているし、これ以上の休みをきちんと与えてやれないのが現状だ。
数日すればまた休みを出せる予定だが、今の所はこの一日が限界で、それを本当に悪いと思っていた。
だが、サスケは緩く首を横に降る。
「いえ、休みは結構です」
「何故だ?」
「今回の任務で私が行ったのは最後のみ、それほど疲れてはおりません」
単純に半月も離れていたから少しでも側にいたいのだと素直に言う口を持たないサスケはわざとらしい理由を付けるが、こういった真意に気付かないナルトが納得するはずもない。
「そんなんお前が思ってるだけだって。自覚はなくても身体は疲れるぐらい分かってるだろ。火影命令だ。明日は休め」
「いりません。少しでも早く副補佐官として復帰すべきだと存知ますし、何より火影様ほど疲れてはおりませんので」
「どういう意味だってばよ」
頑なに首を振るサスケの言葉に自分の事まで追加されたナルトは、少し眉根を寄せる。
「先ほど私が御前へ申し出るまで火影様の気が僅かたりとも注意される様子はありませんでした。この程度の結界で暗部の警護も無いのにあのような無防備になられているのは余程お疲れのようにお見受けしましたが」
「あれは分かってたから警戒しなかっただけで疲れてるわけじゃねー。サスケの気ぐらい目ぇ瞑ってたって読めるし、何するかぐらい分かるっての」
確かにサスケが火影室へ入って来た時、ナルトは少しの注意を払わなかった。それはサスケの姿を見てからではなく、侵入の段階からだ。
だがそれは遠くから気配を判断出来たからであって疲れなどでは断じてない。火影ともあろう者が疲れ一つで侵入者への警戒が出来ないと言われるのは心外だし、何よりサスケにそんな間抜けをしていたと思われるのは我慢ならない。
幼い頃からのライバル関係も決して無くなってはいないのだから。
きっぱりと断じるたナルトにサスケはふ、と楽しげに息を吐いた。
「なら確かめるか」
突然試すと言われ、それが何の事かさっぱりと分からずナルトは首を傾げる。
「へ?何を?」
青い目が見当もつかない事に綺麗に丸まったのを見ながらサスケは足を一歩踏み出した。
「私が疲れていないか、火影様が本当に目を瞑っていらしても私が何をしているか分かるぐらいお疲れでないかを」
すっと火影椅子に腰を下ろしていたナルトの懐へと黒い二の腕前保護される手袋を嵌めた長い指が侵入し、すぐに抜け出る。
出てきた手には額あてが握られていた。
面を被り個を殺す暗部の任務時では額あては付けない。
必ず戻るという意味をも込めてサスケは必ずナルトに己の額あてを預けて行くのだが、それを素早く一方的に受け取るとニヤリと口の端を上げた。
「やっぱり疲れてんじゃねぇか」
予想していなかったとはいえ、何の抵抗もなしに懐へと侵入を許してしまったナルトに皮肉気な声が決め付けて掛かったのが我慢出来ず、ナルトは額あてを奪おうと立ち上がり手を伸ばすが一瞬でそれは崩される。
そう来るだろうと初めから予想していたサスケによって執務机へと身体を押し倒される形となって。
「っ、てめー、何してやがるサスケ!」
一日の業務を終え、補佐官らによって綺麗に片付けられた広い影の布一枚が広げられただけの木の机へと強かに背を打ち付け、ナルトはすぐさま圧し掛かって来た男に赤くなっていきながら怒鳴るが近くになったサスケの顔は涼しいものだ。
「何って今さっき言っただろうがウスラトンカチ」
「ウスラトンカチ言うな!だから何を確かめんだっ!」
「だから俺が疲れていないかお前の身体で確かめて」
言い終わる前に文句を言う為に開かれていたナルトの口が塞がれた。
慣れた仕草と角度で侵入してきた舌がすぐにナルトの舌を絡め取られ、きゅっと目を閉じてしまう。
「んんっ…!」
舌がナルトの口内を嬲りながら唇を息ごと貪るように何度も啄ばまれ、頭の芯がくらくらとしてくる。
歯列の裏をざらりとした感触が撫で上げて行けばぞくぞくと腰から背中へと走り、身体に熱を巡らせた。
「お前が疲れてないかを俺が確かめるだだ。疲れてないなら目を瞑ってても俺がする事ぐらい分かるだろ?」
息苦しさに朦朧としていた頭に耳朶から先の答えを吹き込まれても反応は鈍く、しゅるりと紺色の額あてがキスで反射的に閉じられていた目の上にあてられ、きゅっと結ばれ締まる感触に気付いた時にはもう遅すぎた。
「なー!?ホントに何すんだ!」
目を開けようとしても開けられない、痛くは無いが適度な圧迫感がどれだけ慌てたナルトが頭を振ろうともぴたりと肌に合わせたようにズレすらもしない。
こんな事まで器用だと変な感心を頭の隅でしそうになってしまうが、即座にそれを打ち消し、上に大の男が圧し掛かっている状態で身動きが取り辛い中、それでも目隠しなどというふざけた物を外そうと腕をサスケの身体の下から出す。
だがあっという間に両手で掴まえられ頭の上に一括りに纏められると何か布のような物で縛られた。縄抜け対策に特殊な縛りの結び目をしているのだろう、ビクとも緩まない腕の布の感触にナルトは唇を噛み締める。
「血が出るぞ」
ぬるりとした舌のような感触が唇を擽り、ナルトは身をぶるりと震わせ、息を細く吐く。
「誰のせい、だってば…!」
「お前が誘うのが悪い」
笑いを含んだ声に見えないけれどきっと腹立たしいぐらいの余裕を見せて楽しんでいるのだとナルトは容易に想像がついた。
「頭沸かしてんじゃねー。さっさと解け!火影命令だ」
耳朶にしめった熱の息と低いビロードのような声が掛かり、じわりと浸透してくる熱を振り払うように言い放つがそれを見透かしている男は僅かな躊躇いもなくナルトの上着を捲り上げる。
「お応え出来かねます。先の言葉を証明していただかないと明日の予定にも影響しますので」
ひやりとした外気が一瞬で肌を撫でるのを追って冷たい肌の感触が下肢を寛げ、とさらりとした布の感触がナルトの胸の飾りへと掛かった。
「ひっ…ぁ!」
きゅっと布越しに擦り上げるように突起を抓まれ、ぴりっと痛みのような刺激が走る。
ひりひりとした熱を持ったそこを今度はやんわりと潰すように撫で、捏ねられると甘さを持った痺れが溜まってきた下肢に冷えて少し硬い幾つもの細い肌――恐らく指――が伸ばされ、上と同じ薄い蜜色の糸たちに触れた。
さわっとなぞっただけでくすぐったい刺激に小さく感じてしまう。
「あっ…やっ、めろって…っ」
瞼と額あての二重で閉じられた目が映し出せるのはんな事をしている男の纏う色ばかりだが、その分近くなった感覚がより鮮明に状況を身体へ伝えてきて、たったこれだけの事で疼きを訴える身体を持て余す自分がまるで待っていたかのような反応のようで堪らなく恥ずかしい。
それを楽しむかのように薄い茂みをなぞっていたひやりとした感触がナルト自身を掴み、形を確かめるように包むように扱き出す。
「あっ、あっ…んんっ…」
サスケがいない半月、艶めいた事から遠ざかっていたのだからいくら淡白な方だとはいえ健全な若い身体を持つ男子であるナルトがこういった欲求が溜まるのは当然で、すぐに血が集中し濡れてきた。
すべりのよくなった手で裏筋に沿って、括れを強弱をつけて擦れば自分の下でびくびくと跳ねる普段よりも良い感度にサスケは笑みを刷く。
とろりと先走りで溢れだした蜜の濃さから、他の誰の手にも触れられていないだろう事が推測出来き、常にある焼けつくような不安がほんの少し和らいだ。
屈めた上半身の目の前にあるもう一方の、触りもせずとも赤く色づいてツンと上を向きだしている胸の突起を舌で形を確かめるように舐め、歯を立てる。
「っああっ…あっん」
濡れた柔らかなものから硬いものに微かな痛みを与えられるがそれすらも慣れた身体には快楽として変換されて伝わり、ナルトは甘やかな声を上げた。
布を纏ったままの手が充血するほど愛撫を施した胸の飾りからゆっくりとなだらかな下腹をなぞっていき、背中へと回すと、ナルトの下肢に着けていた服を下着ごと下ろす。
隠すものもなく夜の冷やされた空気に一気に晒され心許無さを感じるよりも、素足や臀部に直接当たる布が火影の名が入った外套だと分かり、それを背負ったままだという事への抵抗がナルトに生まれるがそれに比例するように押し流す快楽が強さを増した。
弄んでいた赤い飾りから唇を離すと鎖骨や首筋を這いながらながら耳朶へと運ぶと、すっかり天を突いて泣いているナルト自身の根元を長い指で輪を作りきゅっと根元を締める。
途端に痛みと行き場を失い暴れ始めた溜められた熱にナルトは息を飲んだ。
「サスケっ、やっ…!」
切羽詰った声で名を呼ばれた男は額あてから僅かに見える眉根がきゅっと切なげに寄せられるのを見て、乾きだした己の唇を舐めた。
熱ですぐに干上がろうとする喉を落ち着かせ、ふっくらとした耳朶を噛み弾力のある肌を歯で堪能する。
「何が、嫌なのですか?」
先よりも熱い吐息を含ませた低い声が耳を擽り、ナルトの腰へと重く響く。
「あっ、だからっ…それっ、はずせって…!」
分かりきった事をナルトに聞きながら弱い首筋に痕を残すほどのキスと、背の窪みや尻の丸みを撫でる手は止めないサスケを額あての下で睨むがその気配すらサスケは楽しげに受け止める。
「それ、とは何の事でしょう?私のする事など目を瞑っていてもお分かりになる火影様ならお答え出来るでしょう?」
「てめっ…!」
先の下らない言葉をまた持ち出してきたサスケを頭上に上げたままの不自由な両手でも殴ってやろうかという想いが瞬間的にナルトに湧き上がるが、悔しいかなこんな状況じゃ避けられると分かっていて、口を一文字に結んだ。
「それ、とは何の事ですか?」
ナルトの腹立ちと羞恥を溶かすように酷く柔らかく優しげな声が促し、背後の手が宥めるようにぎゅっと抱き締めてくる。
意地の悪い事をするくせにその手つきが卑怯にも暖かく、ナルトは熱い溜め息をつくように唇を開いた。
「ゆ、び…指、だってば…っ」
「そう、指です。どの指かお分かりになりますか?」
「そんなん、しらねーっ!」
サスケの小さな笑みが空気を揺らすのを近くにあったナルトの耳は広い、頬への血が一層多く昇って怒鳴る。
「…なら」
うっすらと怒気を孕ませたナルトに応えた様子など欠片も無い声で溜め息のように言うと、サスケは少し圧し掛かっていた身体を離した。
「えっ、っあ、いっああっ!」
言い終えるやいなや回していた腕が腰を掴み、持ち上げるようにくるりとナルトの身体を回して反転させる。
手首を縛られているナルトはそれでも培った反射神経で咄嗟に肘を突いて机にうつ伏せになるが、腕を打ちつけた痛みとそれを上回る捕まれたままぐるりと回された前への刺激で悲鳴のような声を上げた。
強い刺激に抗議しようと口を開くが、床に着いていた足の片方を折り曲げて机の上に乗せられ、背中に掛かった布――火影の外套――を捲り上げられて晒された臀部の割れ目に沿う感触に言葉は出ない。
「っ、あっ!ぁあっ……」
ぐいっと片方の肉を広げられ、そこに湿った熱と濡れた柔らかく熱いものが侵入してきた。
窄まった後庭の入り口でわざと立てられた音と憶えのある感触にそれがサスケの舌だと分かるが、羞恥よりも先に込み上がる疼きと快楽に肩が震える。
一度離れた舌が何かが擦れるような音に続いてした軽い落下音の後に再び戻ると、唾液で濡らし円を描くように唆かされ、ひくりと動き出した蕾に指が二本、三本と立て入った。
「ああっ!…っ、ぅ…んんっ…」
ばらばらに動く指が襞の一つ一つを過ぎるくらいに丁寧に愛撫され、直接的に与えられる快感に背が粟立つ。
塞き止められている前の熱がより重くなり、乗り上げた机に擦られ敏感な先端からも生じる快楽で汚してしまったナルトの中で、唐突にサスケは全ての指の動きを止めた。
「やっ…ッぁ…」
動かなくなった指を少しでも求めてすり寄る襞のもどかしい疼きと熱に苦しむナルトの覆った額あての下にある潤んだ青い目が容易に想像出来て、サスケは愉悦の笑みを浮かべた。
「火影様…」
囁く声のようにゆっくりと蕩けた中で根元までしっかりと入り込んだ指の真ん中の一本だけがその存在を知らしめるように折り曲がり、緩慢な動作で奥を混ぜる。
「ンっ…」
絡み付く肉に与えられる弱い刺激に焦れだしたナルトの耳朶が捉えられた。
「これならお分かりになるでしょう?」
「っ…な、なにがっ……っあ!」
一番長いその指が奥を戯れるように突き、走った快感に声が上がる。
「どの指か、です。火影様がお好きなこの方法でならお分かりになられるでしょう?」
「ばっ…あっ!…ばか、なにが、だれがだっ!」
「こうやって後ろから私の指を咥え込むのを火影様がです」
「そ、れはっ、テメーがやりたっぃ…ああっ、んっ!」
耳の側で紡がれるいやらしい低い声に上気した頬を一層染め上げたナルトの中で唯一動く指が鉤型にぐっと折り曲がり、弱い所を嬲りだしてきてナルトの言葉は続かない。
「どの指ですか?」
代わって反論を無視したサスケの問いが響いた。
「お答えいただかなくては」
きゅっと前を塞き止めている指に力が加わる。
「この…っ!」
普段から良く通る声がナルトの耳朶から脳へと落ちてきて、腹立たしさと羞恥を呼び起こすがそれに連動するようにきゅっとサスケの指を締めつけてしまい、ナルトは身体を巡る熱とじわりと広がり焦がしてくる快楽に喘いだ。
こんな時は絶対に折れない相手だと言う事を過去の経験から知っているナルトは震えそうになる声を絞り出した。
折り曲がった真ん中にある長い指を真っ暗な視界の裏で意識する。
「……かゆび」
か細く啼く様な声がサスケの鼓膜を震わせた。
「聞こえませんが?」
「なか、ゆびっ!」
忍の耳でならば問題ない癖に聞き取り辛いともう一度せば叩き付けるように甘さを含んだ声が上がり、サスケは満足気な笑みを口元に広げる。
「流石、いつも咥えてらっしゃる」
「うるっ、ああっ…!」
底意地悪く言われ、悪態を吐こうとした口はすぐさま中指の代わりに動き出した別の指が齎した感覚に嬌声へと変えられた。
「ではこちらは?」
「ああっ…あっ、あっ…」
中指より短い指が内壁を押し広げるように擦り上げ、答えを促してくるが、ナルトは齎す快感に揺さぶられて頭を振った。
「っも、わ、わかんねぇって……」
「いつも入れて差し上げてるでしょう?」
熱と快感で霞がかった頭にねっとりと囁かれた声にぼんやりと思い浮かび、息を吐く。
「ひと、さし…?」
あまり意識せずに口を突いたナルトの答えにサスケは機嫌を更に良くする。
「正解です。最後のは?」
赤く色づいた菊口をば広げて、揉むように撫で上げてくるもう一つの長い指を内壁が伝える。
「あっ、くすり、ゆ…び…っ」
低く喉を鳴らしながらナルトのこめかみに唇を落とすと、正解の褒美というように前立腺を三本の指が集中して責めたてる。びりっと頭から足の先まで快楽が駆け抜け、細腰が跳ねた。
「ああっ!あっ、あっ、ああっ…」
解され、弱い所を責められた蕾は早鐘のような心音とともに疼きが止まらず、もっと先のものを欲して収縮を繰り返す。
「っ…サ、サスケッ…もっ…」
閉ざされた目を振り返らせ、薄く開き切羽詰った声で名前を呼んできた紅い唇を噛み付くように奪うと、屈めた上半身とともに晒した前をナルトの内部へと進めた。
「んんんっ!あっ、あっ、ああっ、…はっ…あ…」
ぬかるんだ音をたてて硬い芯を持った熱が一拍で侵入し、背が仰け反る。
腰から胸まで圧迫されるような息苦しさと撓んで悦ぶ肉が伝え、駈け上がる快楽にナルトは真っ暗な目の前がちかちかとした。
激しく脈打つそれがまるで心臓の近くにあるかのようにナルトはその怒張した形や熱さの生々しさに熱い呼吸を繰り返す。
閉ざされた視界の裏を侵してくるそれが動きだし、肉襞は蠢いて締めつけると反った頭上から堪えるような呻きが聞こえ、ナルトは下腹と胸のあたりが堪らない、言い難い感情に侵される。
卑猥な音色で鳴く蕾の敏感な箇所を亀頭が角度を変えて嬲ってきて、感情と相混ざってくる身体中が痺れるほどの快感にナルトは喉を上げて甘く歌った。
「っあ、い、イイッ…そこっ、…ダメッ…ぁっ」
引っかかったままの下穿きらが足を、しっかりと結ばれた布が手の動きを制限するがその不自由ささえ快感を促すものでしかない。
ナルトは揺すられ、流されそうになる身体を必死に留めるように合わせられた手首から腕に力を入れて腕を突くがそれを荒々しい突き上げがいともあっさりと崩す。
「あっ、…ひ、たい…てっ、んんっ…と、って……」
壊されるのではないかと思えるほどの激しい求めを映した目の前にある色よりもずっと綺麗な漆黒の眼が浮かび、ナルトはそれをどうしても見たくなり喘ぎへと変わりそうになる声を紡いだ。
「かお、みたっ…ああっ…んっ!」
意識せずにだが阿るように頭をサスケの喉元に摺り寄せ、強請ってきたナルトにサスケは苛立った手つきで固い結び目を解く。
かん、と少し重さを含んで落ちた額あての下から白い肌が赤く染まった目元、快楽と欲で潤んだ濃い青の瞳がサスケを捕らえた。
ぞくり、と穿った神経よりも深く感じる。
「やぁっ!あ、あっ…もっと…ああっ」
孕んだ猛りがより質量を増し、ナルトは高く啼いた。
ぎりぎりまで引き抜かれ、最奥へと楔が打ち込まれる。
その間隔が短く速さを増し、摩擦で充血してくるほどに浅く深く抜き差しされた蕾と無理矢理に出口を閉ざされた先からは卑猥な蜜が溢れ伝い落ち、限界を訴えていた。
「はあっ…あぁ、サスケェ、…ッ…!」
「ナルト…っ」
上目遣いに見返す青瞳と甘い色艶で呼ぶ誘いのままにサスケは濡れた唇を食み、舌を絡ませ貪る。
息さえ奪う激しい口付けと容赦の無い攻めに後ろがいやらしくひくつき、ずっと押さえつけられていた前を双果をごと揉みしだかれ身体に電流が走った。
「んっ…ふっぁ…あっ、あああっ!」
熱いものが走りぬけ、ぎゅっと瞑った脳裏に白い光が閃く。
細かな痙攣で締めつけられた男が膨張し、叩きつけられた熱い飛沫が最奥まで侵食した。



「なかっ、出すなってば…!」
乱れた呼吸を整えながらナルトは未だ出て行かない男を振り返って睨む。
ここは家ではない。
宿屋でもなければ、サスケの所有する別荘というわけでも勿論ない。
里を担い、守る責を全うする場所であり、その為の執務を行う場所だ。
当然の事ながらベッドも無ければ身体を清める風呂があるはずもない。
そんな場所で後先を考えず行動をされて一番困るのはナルトであるのに、責任の一端どころか大半を負っているサスケは悪びれる事なく口を開いた。
「ねだったのはお前だろ」
「バカッ!誰が!」
たった今まで言葉以上の卑猥な行為をしていたくせに瞬時に顔を鮮やかな赤に染め上げ、そのくせ吐精し汚した扇情的な肢体と熱の余韻をとろりと含ませた青にサスケはくらりとする。
「だからそうやって…」
小さく呟き、手袋が外されていたサスケの手が机に乗り上げた足に引っかかっていた服を完全に抜き取り、次いで手首に巻かれた黒い布を解くのをナルトは黙って見ていた。
しゅるりと解かれた黒い伸縮性のあるそれは良く見れば手袋だったのが分かる。
こんなもので、というよりそもそも縛るなと口を開く前に、脱がされた素足を大きく開かされ、サスケの肩へと掛けさせられた。
「ひっ、あっ…!」
腰から下を捻る態勢を取らされたナルトは中にまだ入ったままのものに肉襞が擦られ、びりっと生まれた痺れに艶やかに囀る。
「サスケッ!ちょ、もうダメだって!」
達したばかりのそこは酷く敏感で、擡げだしたそこから生まれた快楽を貪欲に拾おうとじわりと蠕動を始めてナルトは焦った声を上げた。
執務室に火影であるナルトが残っているのは火影邸にいる者も知っている。
深夜で、宿直の者以外は居ないがいつどんな急用で誰が来るか分からないここでこれ以上の行為を続けられないと言うが、サスケにしてみればこれを治めろという方が出来ない事だった。
「そうやって無防備にしてんのが悪い。この半月、どれだけ俺が欲しかったと思ってやがる」
じっと見つめてくる漆黒の双眸に切実な熱と哀願を込めて傲岸な言葉を吐いた。
半月という時間は暗部の、サスケが狩り出されるような任務で言えば決して長いとはいえない。そもそもサスケが狩り出されるという自体、その困難さを物語るようなものだ。
だからこそ不安を一抹も感じぬわけはなく、それを埋めるかのように欲してしまう。
それはサスケだけでなくナルトとて同じ事。
やっと戻って来たサスケの気配を僅かたりとも警戒出来ないのは、こうして己でさえ入らない場所への侵入も許してしまうほどのこの存在を欲しているからで。
「ば、か、サスケ…明日の、休みは無しだっ…!」
サスケの首へと片腕が伸ばされ、引き寄せられる。
「…承知」
啄ばむだけのキスに眼を見張らせた、六代目火影の身体と心の中に最も深く広い侵入領域を持つ男は、その特権を甘受しつくす為にゆっくりと動き出した。




















(終)


うさ様に頂いた素敵キリリク「上火や暗火という上忍以上の設定でのサスナルを裏で」なのですが……へぼくてすみません!!!
一応暗火のつもりなのですが、らしくなくてもう;;(涙)
警戒って意識に引っかかる望まない、異物としての認識という感じがナルトにはあり、こういった任務から帰ってきたサスケに対してはどうしてもそうは思えず、多少無体をされても受け入れてしまいそうだとほ、ほざいて見たり。(滝汗)このナルトは普段でも演習や訓練などで対戦している時以外はサスケの気配を分かっていてもナルトは警戒出来ないようです。 最後のナルトの台詞はそんだけヤれる元気があるなら休みなんてくれてやんねぇ!という意味です。結果としてサスケの思惑通りだったりします。そして密かに Stimulant と同設定だったりもしてます。ま、またしても説明が必要な物をすみませんでした!!(土下座)
こんな駄文ですが、読んで下さって本当にありがとうございました!
こんなんで申し訳ありませんが、うさ様、宜しければ受け取ってやって下さい…!



'06/1/20