それは空気のように透明で空のように自然にずっとあるから。
目を開けていても分からなかった。









そして晴れた空








2ヶ月ぶりだった。
この部屋に来るのも、持ち主の匂いをこうして嗅ぐのも。
ナルトはツーマンセルを組んだ約2ヶ月の任務、サスケはフォーマンセルを組んだ1月半の任務を共に今日終えたばかりだ。
「サスケ、ちょ、風呂っ…風呂入らせろってば!」
黒い忍服を引き上げて白い肌に顔を埋めたサスケにナルトの焦ったような声が降ってくる。
「オレ、すっげー汚れてんの!汗だって掻いてるし!」
確かに剥ぎ取っていってる忍服は汚れているし、舌で味わう滑らかな肌は少ししょぱい。
けれどそんな事。
「構わねぇ」
そのまま上の服と同じように全て脱がせようと下に手を掛けた時ナルトの首からナルトにそぐわない香水の残り香を見つけてしまった。
「オレが構うっつってんだろーが、こんのアホ!」
サスケの動きが止まった一瞬を見逃すほどナルトは忍として鈍くない。
チャクラで細胞活性させた右足の蹴りが見事にサスケの腹に決まり、狭いベッドから派手に落ちる。
「先に入るけど入ってくんなよ?来たら今日はもうさせねーかんな」
頬を膨らませたナルトは床に落とされた服を拾いさっさと風呂場へと消えてしまった。
シャワーの流れる音が聞こえだしてからやっとサスケは身体を起こすと、くしゃりと髪を掻き上げ苛立たしげに舌を打つ。
まるで犬のようにお預けを食らわされたのが腹立たしいわけではない。気落ちする部分がないと言えば嘘になるが。
ナルトからした、ナルトには似合わない渋いスモキーレザーと濃い甘さを含んだ香りに胸の中が重く立ちこめる。
この部屋に来る前に聞いた話とともに。
別々の任務、それも長期のものにつくなどあまりない分、この2ヶ月が苦痛で仕方なかった。
何度無理矢理にでもナルトと同じ任務に就けば良かったと思ったか。
それが不可能だと知ったのはつい先刻の事だが。
報告書を提出しに行った受付所で若作りの火影が含みのある笑みを浮かべて言った内容にじりじりと怒りとも焦りとも、判別しにくいものが焼けていく。
『今回のナルトの任務だけどねぇ…色だったのさ』
自分がどんな顔をしたのか見えないので知りようもないが、根性の悪いクソババァの笑みが更に深くなった。
どんな心算でナルトの任務内容を一緒に就いていなかったサスケに言ったのかと不審を表し口を開きかけたサスケを見越したように綱手はにんまりと笑った。
可笑しくて仕方がないと言うように。
『ナルト馬鹿のお前に邪魔されちゃあ厄介だと思って遠くに行ってもらったんだが、ご苦労だったね』
ナルトの任務と重なるように入れられた長期任務の不愉快極まりない理由を告げた綱手にクナイ一つ投げなかったのが今でも悔やまれる。
「殺してぇ」
ナルトに触れたであろう誰かを。
ナルトの任務に同行した奴も。
そんな任務をナルトに与えた綱手も。
それに全く気付かず任務先で何度も頭のなかで想うだけで大人しくしていた自分も。
「クソッ」
床を叩く鈍い音が響くがそれでこの胸の中の物が紛れるはずもなく、ただ手の痛みが己の間抜けさを嘲笑っているように疼いた。



ぎしりと安物のベッドが規定以上の重みを受けて抗議をする。
風呂を浴びたナルトはさっぱりとした表情にほんの少しもどかしげなものを浮かべながら、サスケが着ているパジャマのボタンに長い指を掛けるのを見つめた。
恥ずかしさに視線を上げれば、濃厚な熱を纏った男の顔があり、それだけで何か術でも使っているように身体を縫い止める夜の空を映したような眼がナルトを捕らえる。
近づいてくる顔に自然と目を閉じ、薄く開いてしまう唇にすぐに暖かい感触とざらりとぬめった熱が押し入ってきて蹂躙しだした。
「…ッん」
背をぞくりとしたものが駆け上がり、奥底から熱を帯びてくる。
あっという間に心臓が加速し、身体中の血が逆流して何もかもがぐちゃぐちゃにされてしまうのに。
それが嫌じゃない。
嫌じゃないのが何故なのかはずっと何となく分からないままにあるけれど。
ターゲットの好みと多少の警戒を考慮した結果、回ってきた初めての色の任務でした時とは違い。
思い出し、騒めきかけた内心をかり、と噛まれ、首筋に走った痛みとむず痒さに戻された。
「ナルト」
瞼を開いて見たその眼が変える。
熱の嵐に。
前を全部開かれた胸に節くれだった、けれど長く綺麗な指が滑っていく。
「あ…あっ…」
突起を摘まみ、きつく捏ねられ、もう片方を舌でねっとりと舐められてどんどん艶を帯びた声に変わる。
何度経験しても自分の声とは思えないそれを聞くのは羞恥を呼び覚ますがそれを流してしまう快楽がまた押し寄せてきた。
痛みさえ感じるくらいに強く吸われればぴりっと鋭く走った感覚にぷっくりと硬く尖りだす。
身体中を巡りだした熱に押されて擡げだしたナルト自身に服を掻い潜って指が絡められるとぴくりと跳ねた。
「あっ…ンッ」
先端の敏感な部分を指で刺激されると密がすぐに零れだし、滑りのよくなった弱い括れの部分扱かれるとそれだけで堪らず腰が揺れ、鼻に掛かった甘い声と快感が抑えようもない。
充血し赤く濡れた胸の突起に歯を立てられ腰に熱がどっと溜まり、溢れだす。
「あっ……あ、あ………、ああっ!」
下着まで完全に脱がされて直接の刺激が上と下で同時に与えられ、サスケの手の中で膨らみあっけなく弾けた。
荒い息を整えるために胸を上下させているナルトにサスケの身体はどんどん熱くなっていく。
だが、それに反比例するように心の一部は重くなっていった。
ナルトについたであろう自分以外との褥の記憶など一刻も早く消し去りたくて触れた肌から、逆に思い知らされたナルトが自分以外に身を許したであろう事実はすっかりと洗い流されて、その肌から香るのはナルト自身の匂いと石鹸のミルクの香りだけだ。
それにサスケは悔しさが込み上げる。
腹立たしい痕跡を自分の手で消してやりたかった。
どこかで許されるのは自分だけだと思っていたその証に。
例え任務だろうと何だろうとナルトに触れて、抱けるのは自分だけに許された行為だと。
言葉にされずとも拒まれないこの関係がナルトの中にある自分に対する気持ちの表れだと思っていたから。
はっきりと心まで手に入らなくとも今はいいと思えていた。
いとも簡単にそんなものはただの幻想でしかなかったと気付かされたが。
結局どう取り繕うとナルトの全部が欲しいのだ。
曖昧な距離を保ちつづけられるほど己の心は寛くもなければ、諦めていけるほど往生際がよくも、ほんの僅かな余裕さえもない。
他の誰かが一度でも触れただけで、浅ましくみっともないくらいの嫉妬が支配してくる。
常に飽和状態で膨れ上がり、いつ溢れてもおかしくないこの気持ちと相俟って降り落ちてきた。
最悪の雨のように。
「感じたのか?」
「えっ…?」
かぁっと羞恥に頬を赤くしたナルトはサスケの言う意味を分かっていない。
「俺以外のヤツでもここを弄られて声、上げたのかよ?」
次いで投げかけた有体な言葉に朦朧としていた青い目が見開かれた。
先の意味を今度は分かったようだ。
「任務で抱かれても悦がったのか?」
「サスケ、なんで知って…ひっ!」
気まずさは無くただ心底不思議そうに聞いてきたナルトにカッと頭に血が昇り、放ったばかりのナルト自身を乱暴に握りこむ。
唯でさえ一度達して感じやすくなっているそこは手荒く上下に扱かれるだけでもすぐさま熱と硬さを持ち始めた。
「こんな風に触らせたのか?」
鈴口に捩じ込むように指の腹で擦る。
「やっ、ちがッ、あっ、あっ!」
否定の言葉を紡ごうとしたナルトを今度は殊更ゆっくりと撫であげた。
ひくひくとひくつき、またとろりと滲ませてきた蜜を擦り込むようにして。
「じゃあどんな風にだ?」
「や、…あっンンッ!」
いきなりゆっくりと柔らかな刺激に変えられ、煽られた熱を持て余してナルトが身を捩る。
「イかせて欲しかったら言えよ…ナルト」
ゆるゆるともどかしく動く手にナルトはただ首を横に振るだけで、言おうとはしないのに焦れたサスケは指で作った輪できゅっと根元を掴み少しずつ出ていた熱さえも止めてしまう。
「そ、それっや、だっ…!」
「なら言えよ。でないとこのままだぜ?」
上からじっと見つめるサスケの漆黒の目はそれが本気だと語っていて、ナルトは息を震わせながら声を絞った。
「……ふっ、ぁ…ん、さ、されてねーって…」
「されてない?」
「かげ、分身使ったから…なんも、されてねぇっ」
濃い青になった目に生理的な涙を溜めて小さく叫ぶように言ったナルトにサスケの目が今度は見開かれるが、すぐに眉根が寄せられ曇る。
確かに忍の術を用いればその身を直接使わなくても色の任務がこなせる場合があった。だが。
「……ならあの香水は何だよ」
「こうすい?」
「渋めの甘ったるい匂いがした。ここから」
流れるラインが誘うような白い首筋を舐め上げながら問い詰めるサスケの声はくぐもりながらナルトの肌に直に伝えてくる。
「あっ、ッ…かえりぎわに、影、分身、消したあと…んっ、抱きつかれたから、ついたんっだろッ」
「本当に?」
こくりと頷いたナルトに言いようも無い安堵がサスケの中に満ちて、今の今まで暴れて仕方のなかった嫉妬がゆっくりと落ち着いていった。
「さ、サスケ…」
苦しげな声で名を呼んでくるナルトの額に、頬に、唇に、下へと順番にキスを落としていく。
潤ませた目で請われると握っていた指の力をほんの少し緩め、降ろしていった口に含んだ。
「…あ!…あっ…ああ、ッン!」
先端から根元まで丁寧に舐め上げ、濡れた音を響かせる。硬くなった芯をねっとりと弄られ、根元を舌で転がされるとじんじんと痛いほどに張り詰めて限界を訴えてくる。
唾液と精液が混ざりぐっしょりと濡れたそれを軽く噛みながら、下を指で擦ってやるとサスケの口のなかでとくとくと揺れた。
嫉妬と怒りで逆上せていた頭では分からなかったが、恐らく任務先で自慰行為すらしていなかったのだろう。
2ヶ月以上も触れられていない身体は過敏なくらいの感度を見せた。
「あっ、や、もう…っ!」
サスケの髪に絡ませて掴む指に応えるようにきつく舌を使い、吸い上げた。
熱い蜜がサスケの口腔に放たれ、嚥下される。
「ば、バカッ!そんなん、飲むな!」
口の端から溢れた白い液体を拭いながら顔を上げたサスケにナルトは上気させていた頬をもっと真っ赤にさせて乱れた息のまま怒鳴った。
だがサスケはさらりとそれを受け止めて返す。
「欲しいんだよ」
全部、と低く囁いてきた声は巫山戯てなどいない。
両手をナルトの顔の横に突き、深い黒をした目が紺碧にちかくなった青を捉え、どくりと胸が大きく打ち、やっと流れが緩やかになったはずのナルトの血がまたザァザァと言い出してきた。
「嫌か?」
この眼にじっと見つめられるのは弱いというか、この眼が卑怯だとナルトは思う。
熱を湛えた、熱そのもののような眼が恥ずかしくてしょうがないのに駄目だと言えなくさせる。
「…嫌だけ、ど……けど、すんげーヤ、じゃないから……いい」
ぷいっと横を向いて枕に顔を隠したナルトの頬に触れるだけのキスを何度も降らせながらサスケはナルトの身体をただ抱き締めた。
「サスケ?」
縋るように力が込められた腕にナルトはどうしたのだろうとしがみついてきた男に首を傾げる。
「お前の今回の任務が色だと五代目から聞いて、腹がたった…どうしようもないくらいに」
振り向いたナルトから眼を逸らさず、サスケは突然の睦言を紡ぎだした。
サスケにとっては突然でも何でもなくずっとずっと溜まっていたものがついに溢れ出てきてしまっただけだったが。
「でも任務だし、」
「それでも嫌なんだよ。俺以外の誰かに指一本でも触らせたくねぇ」
仕方ないと続けようとしたナルトの言葉尻を攫った、ともすれば横柄な我が儘のようなサスケは言い分に、それがどうしてだか嬉しく思えて、ナルトはまた顔が血が昇ってくるのを自覚する。
「お前は…嫌じゃねぇのかよ」
聞きながらそれは多分の懇願を含んでいた。
ナルトが嫌だと言ってくれるように、自分だけにその身体を許してくれているように、そう想ってくれている気持ちがあるようにと。
そんなサスケの問いにナルトはあっさりと、あまりにもあっさりと欲しい答えを放り投げた。
「そりゃ嫌だったってば。直接ってわけじゃねーけどサスケ以外のヤツにあんなんされんのって思っただけでなんかすげー気分悪いって思ったし、やっぱ気持ち悪かったっていうか…」
影分身といえど全くナルトが何も感じないわけではない。勿論ただ見ているだけでも思うところはあるし、何よりある程度の情報は本体であるナルト本人にも届く。
任務で、すべき事と頭では分かっていてもターゲットの男に組み敷かれた自分の姿は酷く嫌で。
いつもそういった行為ではすぐに湧き上がる熱に何も分からなくなるくらいに翻弄され、それに全てを任せてしまい抵抗が出来なくなってしまう。
それほどの気持ち良さ。
けれどそんな風に思えるのはサスケだけだと知った。どれだけ肉体的快楽を引き出されようとも、ぞわぞわと気持ち悪さが込み上げてくる。
どうしても他とかは考えられないのだ。
サスケとは初めから成り行きというか、ごく自然にそれを受け入れられたというのに。
それに。
「サスケにだけはそんな所見られんのも嫌だったからばーちゃんに組ませないでくれって言ったんだしさ…」
出来れば知られたくなかったとぽつりと小さく洩らしたナルトにサスケは間の抜けた答えしか返せなった。
「何?」
「え?ばーちゃんから聞いたんじゃねーの?」
「……」
「あーっ、ナシ!今のナシだから!」
赤い顔の前で両腕を交差してナシ、と慌てたように繰り返すナルトに頬が緩んでいく。
どうして見られるのが嫌だったのか。
どうして俺は受け入れるのか。
あまりにも可愛い事を言ってくるナルトに期待が膨らんで抑えようがない。
透明な青が奥に持つそれを、鈍感なこいつ自身が見つけていないものを探し当ててやる。
もうとっくに我慢を越えた精神の背中を押すにはナルトの無自覚な言葉は十分だった。
「ナルト」
目の前で交差する邪魔な手をやんわりと掴み解き、まずはしかめっ面をした赤い顔の濡れて誘っている唇を篭絡する。
「んっ…」
唇を割られ、歯列の裏の敏感な部分を舌で何度も舐められると、身体はすぐに熱の記憶を手繰り寄せ、ナルトは無意識の内にサスケの首へ腕を回していた。
角度を変えじっくりと口腔を強引ではなく、いいように弄られてうっとりと夢中になってしまう。
ちゅっと唇を吸い、漸く離れた口はすぐに耳朶を甘噛みされ、ぞくぞくとした感覚が背筋を走りぬけ、奥をじんと痺れさせてきた。
「あっ…」
自身の放ったもので濡れているナルトを握りこみ、やわやわと揉みしだくとすぐにまたサスケの手の中で大きくなってくる。
素直な反応に気を良くしながら強弱をつけて扱いてやるともっと高く甘やかな声が上がり、ぴくんと跳ねて白い肢体を捩るナルトに心底からの熱がサスケの中に満ちてきた。
小さく唾を呑み込むと身体を離し、ナルトの両脚を立てさせて大きく広げさせる。
「やっ…あ!」
あられもない姿とそれを直視する視線にナルトは羞恥が蘇り脚を閉じようとするが、片手と割り込ませた身体でサスケはそれを許さない。
先に放ったものと新たにサスケの手を濡らしだした白いそれを指に絡ませると、すでにひくついてぴくぴくとしている奥の蕾の縁をなぞり、もどかしい感触をナルトの身に走らせた。
「あ…ああ……サ、スケ…」
何度も縁ばかりを長い指がくすぐったいほど軽く撫でていくだけで、それ以上を知っているそこにそれ以上の事をしてこない指に焦れてナルトは堪らずねだるように名を呼ぶ。
だがそれでもサスケは何もせずじっとナルトの顔を覗き込む。
収縮を繰り返し早くと訴えてくる奥の疼きとずっと煽られ続けている身体の熱がぼんやりと霞をかけている頭と目には分かりにくいはずなのに、その黒い切れ長の眼が見ているのは何故かよく分かった。
「ナルト」
言いながら額にキスを一つ落とし、より近くなった熱に浮かされた瞳にしっかりと視線を合わせる。
「好きか?」
人差し指でそろりと蕾の入り口に白い蜜を塗りつけながら聞いてくる。
「え、あっ…っんん!」
好きか、と聞かれた。
その言葉は確かに届いたが蠕動して指を咥え込もうとするそこの動きと弱い刺激にナルトは答えることも出来ず高い声で鳴く。
それでもサスケは重ねてくる。甘く低い声を吐息さえぶつかるほど唇を寄せて。
「俺のこと、好きかよ?」
くちり、と指の先が入っていやらしい音がし、ぎゅっと目を瞑るが却ってサスケの意地の悪い指の動きと音が大きく響いてたまらずナルトはまた目を開けた。
すぐに問い詰めてくる黒い眼とかち合うのに。
「好きかって聞いてんだよ、ナルト」
「そ、そんなん、いま、わかんねぇ…っ!」
揺れそうになる腰を必死に抑えながらナルトはサスケを睨んだ。
だがサスケはどこか嬉しそうに口の端を上げた。
「分かるだろうが。お前にこんな事出来るのは俺だけなんだろ?」
収縮する蕾に指を突き入れ、濡れた音を立てさせる。
「ああっ!あ、あっ!」
待ちわびてやっと与えられた快楽にナルトの背が反らされた。
押し入った数本の指は襞の動きを堪能するようにやんわりと押し開き、ばらばらに動いて一つ一つをじっくりと愛撫する。
探るように弄られ蕩けそうな快感が這い上がってきて、思わずナルトは腕を伸ばしてサスケの背に縋りついた。
密着するように回された腕の温もりに喜びながら攻める指を緩めることはなく、サスケは一番敏感な箇所を撫でるように擦り上げる。
「あっ、あっ!そ…ッ!」
電流のようなものがぞくっと走り、ナルトの脚がぴくっと跳ねた。
身体中を巡って浸されていく激しい快楽に、高い喘ぎで啼かされ続ける。
すらりと長くナルトよりも太く、けれど綺麗な指に纏うように絡んでいき、与えられる刺激を貪欲に呑もうとする薄桃色の襞はすっかり柔らかくなり。
とろとろになったそこから一気に指が引き抜かれ、物足りなさに撓んだ最奥がナルトを疼かせた。
「やっ…だ、っふぅ…」
もの欲しげにひくりと動くたびに塗り込められた蜜がとろりと零れた蕾にとうに硬くなっていた自身をサスケはあてがう。
くちゅっと押し付けられた部分から音があがり、すぐに銜え込もうと開きだす口を焦らし寸でで止めた。
「あっ、はや…くっ!」
羞恥さえ吹き飛んでしまうほどに身体を蹂躙して暴れる熱にナルトは堪らず強請ってしまう。
「ナルト…好きだ」
初めてこんな熱を交わしたあの夜から二度目の告白だった。
耳朶をねぶるように舐められ、告げられてぶるりと震えながら胸の真ん中が引き寄せて包まれるような感じと暖かな痛みが広がっていく。
「お前は?」
囁くような、それでいてよく通る低い声で催促をしてすぐにナルトの腰を引き寄せ猛ったもので一気に貫いた。
「あっ!あああっ!」
強すぎる、衝撃にすらなる刺激にナルトが白い喉を仰け反らす。
目も眩むような狭い締め付けとすぐさま絡みついてくる熱の内壁にサスケは歯を食いしばった奥で唸り、すぐにも弾けてしまいそうな衝動になんとか耐える。
荒い息を吐き、狭い蕾の中で動かず濃厚な肉の纏わりに馴染ませた。
「好き、だろ」
「わかっ、んねぇって!」
中で激しくどくどくと脈打つのを生々しく訴えてくるそれが齎す強い圧迫感と重い熱に考える事を放棄したがる頭はいやいやをするように振られる。
勝気で騒々しい普段の姿からは考えられないほど滲む色香に流されそうになるのをサスケは耐えた。
「なら何で俺だけには、こんなコトさせンだよ?それともっ…好きでもない奴と、誰とでも出来るのか?お前は」
きつい締め付けに息を整えながら、ナルトを追い詰める。
身体だけでなくその曖昧で不安定に漂う気持ちも。
「そ、れはっ…ああっ!」
ゆっくりと腰を使い、挿抽され擦れる度にナルトはざわざわとおかしくなりそうなほど感じすぎるくらいに感じた。
止め処なく生まれてくる快感とそれを生み出す太い鼓動。
自分のものなのに自分のものでないような感覚にさせるほどの深く侵入してくる熱と存在。
こんなもの、許せない。
他の誰かでは絶対に嫌だ。
本来受け入れる所ではない場所で受け入れるこの行為はいつも痛みと苦しさを伴い、それは無くなることはない。苦痛を上回る快楽は確かに存在するが、溶けて一つになるのではないかと思えるほどの熱が怖さや気持ち悪さでなく今みたいに安心するような気持ち良さに感じれるなんて、きっと他では無理だと思う。
これがただの欲情の結果でないのなら、この胸を衝く泣きたいような甘い疼きが愛おしさだとしたら。
どうしよう。
分からないからと、考えなくても変わらないとずっとずっと思っていた。
それは裏を返せばずっと意識しないだけでこの気持ちはあって、考えて分かってもこの心は変わりはないからだ。
あまりに自然にそれはあって、あるのが当たり前だったから分かりにくかった。
こんな風に気付かされるのも言わされるのもすごくムカつくし、癪だけど。
でも。
「ナルト」
こんな切なげな声で、縋るように黒い眼で見つめてくるから。
「あっ、す、…きっ…」
喘ぎに交ざり、途切れそうになるそれをサスケは聞き逃さなかった。
「!…ナルト、もう一回」
言ってくれ、と耳朶から頭のなかを蕩かすような熱い声を注いでくる。
「好きっ……だ、って…ああっ!」
焦がれて、焦がれて耐えられなくなるほど望んだ言葉を手にする。
どくりと血が回り中のサスケが大きくなって、ナルトの媚肉を強く擦り上げた。
「ひゃっ、あっ、あっ、ああっ!」
色に濡れた嬌声が絶え間なく上がり、それをもっともっと引き出すようにぎりぎりまで抜き、奥へと穿つ。
溢れかえる愛おしさとやっと本当に腕に抱けたナルトの中を全て染めてしまいたいと願う激しすぎる独占欲から。
ぞくぞくする。
幾筋も涙を流して潤ませ欲情をたたえた青い瞳。うっすらと紅を刷いたように触れた箇所から染まっていく傷一つない白い肌。切ないような甘い嬌声を囀る艶やかな唇にサスケだけを求めてくる愛しい腕。
全てがサスケを呑み込み夢中にさせる肉体だ。
けれど身体だけでは嫌だ。
ナルトの心をも感じたい。
鈍感なそれを探し当てるのは苦労するが、そんな事は言ってられない。
それとなく感じるのではなくしっかりと心も一緒に感じたいし、ナルトにも感じて欲しい。
「好きだっナルト…!」
荒い息で伝える。
言葉にすればこれにしか出来ないのに歯痒さがあるほどの想い。
言い表せない分をせめてとこの熱に乗せてぶつけるがそれでも足りないとばかりに貪欲に。
「あ、あっ、あっ…オ、オレも、好きっ……!」
きゅうとサスケを締め付けながら、気付かされたばかりの持ち続けていた気持ちを返す。
一層激しくなった動きで、後ろからの刺激に反り返り、張り詰めたまま放っておかれていた前がサスケの腹に擦れた。
口蓋をざらりと舐め弄られ、ナルトの背中が震え頭が真っ白になる。
「んんっ…!」
唇が離れ、呑み込めきれなかった唾液が口の端から伝うがそれすらももう分からないナルトの一番いい、こりこりとした部分を大きく突き上げた。
「ああっ、あっあ!…っン、ああ!」
争い難い熱がナルトを襲い、溶かされた意識がしがみつくようにサスケの腰に脚を絡ませ、腰を動かす。
それに返すようにサスケは啼きつづけて乾いた唇を塞ぎ舌を絡ませ、ねっとりと弄った。
心臓が狂ったようにがなりたてている。
「も、も…ダ、メッ……!」
限界を訴えると、ぐりっと捻じるようにしこりのような箇所を擦りながら奥へと穿たれたナルトは一気に昇りつめた。
「ああ、ああああっ!」
ぴくぴくっとナルトの内腿が痙攣する。
「っは…ナルト…!」
ナルトが達っした瞬間の、最奥まで突き挿れたサスケの全てを搾り取るような内襞の噛みつきにどくりと熱が爆ぜた。
小刻みに揺らし、全てを注ぎ込んだ飛沫をナルトが目を閉じて受け止める。
ぶるりと震え、ゆっくりと身体を弛緩させていったナルトをサスケは骨が軋むほどに抱き締めた。



陽なたのような温もりにほんわりと包まれていた。
心地良いのはその暖かさととくんとくんと規則的に鳴る穏やかな心音のリズム。
髪を撫でるようなものと頬に感じる柔かな感触。
そして。
くすぐるように囁かれる低い耳さわりの良い声が紡ぐ言葉。
「好きだ…ナルト」
浮上し目覚める寸前のナルトの意識にそれは入ってきた。
目をぱちりと開けると隣でしっかりとナルトに腕を巻きつけるサスケが見え、先程の言葉を発したのだと分かり。
同時に。
『オレも好きっ!』
熱に浮かされながら何度も叫ぶように言った言葉と自分のものとは思えない声が脳裏に蘇ってしまい、途端にナルトは恥ずかしさから布団を頭まですっぽりと被ってしまう。
「ナルト?」
いつになく優しげな声で名前を呼んでくるのがまた羞恥を込み上げさせてますます深くナルトは布団の中に潜る。
サスケは少しの間それを黙ってみていたが、出てくる様子がないと分かると布団の上からぎゅっとナルトを抱き締めた。
「ナルト、昨日お前が言ってくれた言葉は……やっぱり違うか?」
そして顔があると思われるふくらみに口を寄せてらしくないほど弱々しくそんな事を言ってくる。
布団の中でナルトはきょとん、と目が丸くなった。
「無理矢理言わせたようなもんだから違うなら、その、はっきり言ってくれ」
馬鹿じゃないだろうか。
ナルトは情けない声で、悲壮な判決を待つように言うサスケについ呆れてしまう。
確かにあの状況では無理矢理言わせたとも言えるだろう。
だけれど本当にサスケの事を何とも想ってなくてはあんな事など出来るわけはない。
後ろからがっちりと抱き締めて離さないこの男自身がそう言っていたくせに今更何を言うのだろうか。
恥ずかしいけれどしょうがない。
あまりに馬鹿な勘違いをしているのだから
「…オトコに二言はねーっての」
亀の子よろしく首だけをひょっこり覗かせたナルトは、少し掠れた声で俯きそうになりながらも言ってやる。
「サスケが好きだってば!」
早口で言うとすぐさま布団へと引っ込んだナルトを抱く腕が、一拍の後より強められた。
サスケもナルトも自分自身を本当に馬鹿だと思う。
そしてどうしようもなく鈍い。
透明な空みたいなもので、見えなかったがずっとお互いにあったものだった。
嵐も雨も去って。
漸くそれは見えた。
晴れた空のように。




















(終)


春様から『「それはやがて来る雨のように」の設定で、やっぱり体だけじゃ嫌だぞコルァといった心境のサスケさんを 裏で』という素敵で有り難いリクエストを頂き、書かせてもらったのですが…激しく任務失敗な感が(滝汗)む、無駄に長いだけでへこたれまくってて申し訳ないです;
綱手はナルトが「サスケには〜」と言うのを聞いて、ナルトのオトメ心(笑)を「なんてまぁ可愛い事を言うんだい」とか思って、サスケにはっぱをかける事にしたんです。これぞ老婆心(笑)って本人の前で言ったらあわわわ;
へっぽこへたれの名を欲しいままに出来そうな見事な駄目っぷり全開な、纏まりのない駄文で申し訳ありませんでした…!(土下座)
因みにこの後こんな会話がされたりしたそうで。

「ところで今回の任務、一緒に組んだ奴がいたよな?」
「あー、うん。ツーマンセルだから一人だけ」
「誰だ?」
「………サスケさぁ、なんで写輪眼出してんの?」
「気にするな。それより誰か言えよ」
「何か言うとすげー良くない気がするってば」
「…………」

結局ナルトからは聞けず、自分で調べ、任務中で影分身ナルトの濡れ場を見たその相手にしっかりと釘を刺しにいくサスケがおります(笑)
とことんアホな話で失礼しました;(滝汗)こんな駄文ですが春様、受け取っていただけますでしょうか;



'05/9/25