にやり、と笑って口にした台詞に噛み付いてやろうと思った。









ならばしょうがない










お互い長期任務明けで、一週間の長期休暇の初日の夜といえばする事は一つしかない。
少なくともサスケの頭では一つだけだ。
他の思考など完全に排除されているのだが、シャワーだけでなく湯船にゆったりと浸かり心地よい清潔感に包まれ、すっきりした顔でさっさと寝入ろうとしたナルトは違うらしい。
再び住む様になったうちはの家で一番最初に買った新しい家具であるキングサイズのベッドで薄い羽根布団を被ったナルトは、瞼を閉じて完全に身体を休める体勢に入っている。
少し低めに温度設定されたエアコンが吐き出す空気は風呂上りの身体にはちょうど良いらしく、寒くもないナルトは伸び伸びと休めるだけの距離を取って、今にも寝入ろうとしていた。
「オイ」
スプリングを軋ませて、同じように横になっている――が、意識は睡眠には程遠くにある――サスケが布団の中で動きながら夢の世界に行こうとするナルトの意識を掴んだ。
「んあ?サスケ、何?」
億劫そうに瞼を上げたその顔は今から訪れる休息に幸せを見出していている。
「何じゃねぇ。決まってんだろ」
身体に感じる重みにナルトは眉根を寄せて隣ではなく真上にある男の顔を見上げた。
熱っぽい眼をして圧し掛かってきたサスケにどう言った類の物か分からないでもないが、惚けてみる。
「決まってるって明日のラーメンが?」
「フザケんな」
瞬時に眉間に山脈を作り問答無用でパジャマのボタンを外していくサスケの手をナルトはあまりにも冷たい言い分で掴んで止めた。
「ちょ、勘弁!もう遅いし眠いしヤだ」
「てめぇがプロレスなんぞいつまでも観てるから遅くなったんだろうが」
テレビの為に遅くまで起きれても恋人とベッドでコミュニケーションを取るためには起きれないと言い放たれ、そのままはい、そうですかと聞いてやる事などサスケには到底無理な話だ。
素早く手首を捻り手を掴み返すと、もう一方と一緒にナルトの頭の上で纏める。
いくら食べても運動をしても肉のつきにくい身体の手首はサスケよりも細く、大きく骨ばった片手でがっちりと押さえ込む事が出来た。
さほど力は入っておらず痛みなどは無いが、ナルトはいつもながら強引なその手に不服そうに頬を膨らませる。
「みちのくプロレスはガキの頃からのファンなの。ぜってー観るのが当然だろ」
「久しぶりの休みに恋人に優しくする方が当然だろ」
もうどれほど肌を重ねていないと思っているのだ、と暗に込めて言えばまた不満そうな声が返された。
「オレってばいつもサスケに優しいじゃん。お前、嫌だって言っても聞かねーし」
一月に及ぶ任務の間に全く何も無かったとは、言わない。
目の前にナルト居て、状況に余裕があっても尚、手を出さずに居れるほどの我慢強さなどサスケは持ってはいない。
だが慌しく触れ合っただけでは到底。
「足りるわけねぇだろ、あんなんで」
こいつという存在をいつだって欲し続けていて、いつだってすぐに飢えてしまう。
一番上のボタンまで外し、ほんのりと高い体温を放つしっとりとした肌に自然と喉が上下した。
奥から込み上げる熱を宥めるように唾液を嚥下したその微かな音に面倒そうな声で、けれど悪戯を仕掛けるガキのような笑みと挑発的な青い眼に熱の膜を纏わせる。
「食いてぇの?」
明らかにこちらの余裕の無さを楽しんでいる風情のその笑みと台詞に噛み付いてやろうと思ったが、それ以上に威力が大きい。
色を含んだその誘いに乗らないなど出来るはずがない。
「…食いてぇ」
食わせろ、と呻くと返事を待たずに人を弄び楽しんだ台詞ではなく、それを紡いだ唇に噛み付く。
しょうがねぇなぁ、と呟いた声は荒々しく侵入してきた舌が絡み取った。





















(終)


サスケは気付いていませんが、日付けが変わってサスケの誕生日になったのでナルトから(一応これでも)誘い、しょうがない、と言ったのであります。
中でちゃんと説明出来なくてすみません;;
この後、事の途中で遠回しなお祝いの言葉をナルトが言い、それを知ったサスケが調子に乗って翌日、機嫌を取るのに苦労したとか。
短すぎてすみません;

サッケの誕生日SSでした><
もっとまともに祝ってあげたいけど、時期が悪いんだよ、サスケェエエエエ!(おまえまともなオフ活動とかしてねぇだろ)
毎度のアホな駄文ですが、読んでくださってありがとうございました!


'06/7/24

'07/7/6